実際のプラン策定に向け、クライアントとアクセンチュアの間で激しい議論がなされるようになった。徹底した議論を行いながら、月に1度の報告会で調整を図り、クライアントにとって必要かつ最適なeコマース・プランを策定していった。実は、最初の報告会は、プランの内容をめぐり、特に激しい議論の応酬となった。アクセンチュアは基本コンセプトをまとめることに重点を置いたが、クライアントは、eコ マース導入後の姿に大きな期待を抱いて、導入後のイメージの明確化に主眼をおいていたため、コンセプト主体の話からは具体像を掴むことができず、「ありきたりなプラン」という印象を持ってしまったのだ。そこで、プロジェクトチームは、クライアントにとって必要な2つのeコマースを提示する。1つは、業界の先陣となることで価値のある「成功確率の高いスタンダードな、あたり前のeコマース(スタンダードeコマース)」。これは、後から他社が真似をする可能性はあるものの、トップを切って始めることで得られるメリットが大きいため、そのメリットを明確化して提案を行った。2つ目は「旭化成ならではの強みを発揮するeコマース(強みeコマース)」である。これは、事業ごとのマーケットやポジションの強み、サプライチェーン上の強み、競合他社に対しての強みなど、様々な面でクライアントが持っている「強さ」に注目した具体的な手法である。強みeコマースと、スタンダードeコマースとを組み合わせ、他社には真似できないオリジナルのeコマースを構築する―――具体的かつ斬新なプランの提案により、クライアントと視点が一致し、実行段階へと進むことができた。
「スタンダードeコマース」と「強みeコマース」との組み合わせに、クライアントも納得し、大型投資が決定した。これにより、アクセンチュアはプロジェクトメンバーを増員し、業務改革とそれを実現するシステム開発に必要な人材を適所に配置し、実現へと大きく踏み出した。しかし、その道のりは平坦ではなかった。この時期、クライアントの現場で否定的な意見が続出する。海外事例をそのまま旭化成に持ってきても、日本でその通りにできるはずがない、現状の業務が一番良いはず――― といった内容であった。しかし、プロジェクトが目指しているのは、海外のeコマースの焼き直しではなく、あくまでもオリジナルeコマースである。それを理解してもらうため、より具体的なeコマースの姿・カタチを提示する必要性をコンサルタントたちは感じ取っていた。
問題なのは、否定的な意見・誤解ばかりではない。現場には、現状を変えたいという思いの強さから過度の期待を寄せ、eコマースを魔法の杖のように捉えている社員もいた。イメージや一般論を語るだけでは、アクセンチュア が考えている現実的なeコマースと、クライアントの現場で考えられる夢のようなeコマースは、かけ離れていってしまう。そこでアクセンチュアは、より具体的な作業を実感してもらい、業務を改革していくのは彼ら自身であることを理解してもらうため、実際のシステム画面の試行版を つくることにした。実際に使用した画面は250枚であるのに対し、作成されたHTMLは1000枚。これらの作業の過程がコンサルタント間の意思統一に役立ち、クライアントのイメージ共有にも大きな役割を果たした。真の改革を実現するためには、必要不可欠のプロセスだったといえる。
次の記事を読む: 旭化成 プロジェクト - 4/4 - 第3ステージ:eコマースシステム稼動へ